天使なんかじゃなく。
俺は。
俺だけの鳥を手に入れるよ。
―ANGEL or BIRD―
あれから。
その事件の可笑しさに気付いた警部が調べ上げ、自ら自分の部下の犯罪を世間に公表した。
警察の信用は落ちるかと思われたが、そんな警部も居るのだ、と、意外にも良好のようである。
白い鳥は、今も変わらず空を飛び続けている。
チカッと一瞬の眩しさ、夏の空特有の斜光に、閉じていた瞼を思わず開ける。
そのまま上体を起こし、辺りを見まわす。どうやら、いつの間にかソファーで眠っていたらしい。
窓の外、柔らかい陽射しに目を細めた。
サワサワとそよぐ緑が、木目調のフローリングに影を落としている。
広々としたリビング。かと言って生活感が無いわけでもなく。
居心地の良い空間。
しかし、何かが足りない。
「快斗」
「快斗、何処だ」
「なにー?どったの、新一」
ひょこりと、キッチンの方から顔を出す快斗に、安堵して。
「消えんな」と、一言文句を言ってやる。
消えてしまったのかと思った。羽根のように、消えて無くなってしまうかと。
いつか、この鳥籠を抜け出してしまうのではないかと。
一体、俺はどれだけ思いつめた顔をしていたのだろうか。
俺の言葉を聞いた直後の、きょとんとした怪盗の―――、いや、快斗の顔。
ぷっと、可笑しそうに噴き出すと、はにかんで。
「大丈夫。俺は消えないよ?
だって、俺の鳥籠の鍵は、新一が持ってるんだから 」
その、空気に溶けてしまいそうな笑顔に、思わず手を伸ばす。
この手が届く前に消えるかと思ったそれに、しかしちゃんとこの手は届いた。
ぎゅっと抱き締めて、頬に軽くキスを何度も送る。
その内に快斗は、クスクスとくすぐったそうに身を捩る。
けれど、俺は放してなんかやらない。
この世界という籠の中に。
俺の籠の中に、
真白き鳥を。
俺だけの、愛しき鳥。
<END>
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