ねぇ
空は遠すぎる
―白き小鳥の墓、蒼の空―
崩れ落ちた貴方を見て、嗚呼、この人は俺に堕ちて来てくれてしまったのだと感じた。
そんな貴方が哀しくて愛おしく。
そっと、触れるだけの接吻を。
驚いたように見開かれた瞳に、悪戯っぽく微笑んでやる。
俺は犯罪者だけど、今まで一度も人を殺した事なんて無かった。
だけど、今度こそ分からない。
だから、ねぇ。
貴方はそこで待っていて。綺麗な綺麗な光。
なんだったら、俺の事なんて忘れてくれていいよって言ったら、貴方はそんな事冗談でも言うんじゃないと怒って声を荒げたけれど。
別に、冗談じゃなく忘れてくれてもいいのに。
そう、思ったけれど口にはしなかった。
すればきっと、貴方は怒る以前に悲しむだろうから。
純粋過ぎる貴方は、犯罪者の俺を見捨てる事もしなかった。
だけど、それはヒカリを弱らせてしまうだけ。
貴方にとって、俺という闇は毒にしかならない。
さよなら、さよなら。愛すべき名探偵。
もし、俺を覚えていてくれるなら、花を黒羽快斗の墓へ供えて下さい。
綺麗な綺麗な、花を。
そう、もうこの世の中には黒羽快斗という人物は居ないのです。
母さん、泣かないで。
貴方の息子は、綺麗なままだから。
俺は、もう、本当に唯一人。闇の中で生きていく。
貴方が、花を供える度に。貴方の中の俺は風化していく事でしょう。
俺への想いは、舞う花のように何処かへ飛んでいってしまうかもしれない。
嗚呼、せめて愛してると言って抱きしめてくれたら。
だけど、もうきっと貴方は。
きっと、
俺を忘れるから。
忘れないで、という言葉は、飲み込んで
そっと、この心の奥にしまっておくんだ。
今までと同じ、笑顔の奥に雫を溜めて。
空を見上げれば、其処には。
憎らしいくらいに滲みもしない、澄んだ蒼が広がっていた――――。
<END>
(BGM:風化風葬/Cocco)