見慣れた桜色を見かけた。




しかし其れの持ち主は、いつも玄冬の傍に居る小柄なそれではなく、細身ではあるものの、やや背の高い―――とはいっても玄冬よりは遥かに低い為、玄冬としてはその小さな頭を軽々と見下ろせてしまう程度だったが―――鎖白だった。

遠くをぼんやりと見詰めている、鎖白。






何かが玄冬の脳裏を掠めた。




―――きっと、気のせいだ。




その何か、を振り切る為に、鎖白が此方に気づくまで、そうそう見れそうもない楚々とした様子の鎖白を観察している事にした。

希少価値だろうから、後で花白にでも話せば話題に事欠かないだろう。

そう思って。




銀朱をからかっている時のような悪戯っ子のような面影はなりを潜め、黙っていれば本当に綺麗な顔立ちをしていると思う。







サラリと揺れる、桜色。









―――また、だ。

再び、玄冬の脳裏を過ぎるものがあった。

その桜色に触れたい、と思う。

鎖白が花白に似ている所為だ、と自分に言い聞かせる。

けれど。

似ている、ではなく、そのモノだった何か、があったような気がして。











―――遠い、遠い記憶。遥か、過ぎ去ってしまった、過去の。












そんな事を思っていた時、見詰めすぎた為だろうか、

玄冬に気づいたようで、鎖白が顔を上げた。




「よぉ、おっきぃクマさんじゃん。どしたの?」




その表情は、いつもの、シニカルとでもいうのだろうか。

もしくは気の抜けるような笑みで、しかし確かにその瞳の奥は鋭い光を宿し、それが救世主である事を物語っているかのようだった。











心の何処か、が。疼くのは何故だろう。











END










初代の玄→救前提。