真実なんていらなかった。


父の名は、そんな真実なんていう言葉で穢されたんだ。


だから、だから。

















探偵なんて、大嫌い。














『 Wanna be White 』―3―












「今日、転入生が来るんだって。新一、知ってた?」


「へー・・・」


「まったく、新一ったらー」


気の無い返事に、蘭は頬を膨らませた。

その様子を見て可愛いと思ってしまった新一は、柄にも無く心の中で照れる。






「しょうがないわよ、蘭。このとーへんぼくに何言っても無駄無駄」


ぽむ、と蘭の肩に手を置いて、園子が手を顔の前で左右に振る。

新一は二人をしばし横目で見詰め、一つ欠伸をすると窓の外へ視線を投げた。










「どんな子が来るのかな〜」


「きっと、格好良い子よ!キッド様みたいな!」


「・・・・・・」


そんな無茶な、という顔で蘭が苦笑したと同時に、かしましい二人の様子を黙って窺っていたのか、新一がそちらを翳み見て鼻で笑った。


「ちょっと、新一くん!?今、鼻で笑ったわよねぇ?」


「ああ」


しらっと答える新一に、園子がキィ〜〜〜ッと両手を握り締め、床をドンドンと踏む。

その様子は、お嬢様がするようなものでなかったが、それすらも園子の魅力の一つとなっているのが凄い。

蘭を含め男女問わず、園子をとても気に入っているのにはそれもあるのだと思う。

新一自身、園子の事を実は結構気に入っている。園子の親友である蘭は当然だが。

気取らないその性格が、皆に好かれるのかもしれなかった。










そんな時、扉の開く音がして教師ともう一人見知らぬ少年が入って来た。




「HR始めるぞー。・・・と、その前に新しいクラスメートだ。

ほら黒羽、何か簡単にでいいから自己紹介」



連れて来た少年の肩に置いていた手を一旦離すと、ぽんっとその背を押した。

黒羽、と呼ばれた少年はペコリと軽くお辞儀をすると、眩しい笑顔で微笑んだ。



「はじめまして!黒羽快斗です」



明るく自己紹介をした少年に、クラスメート達は興味津々だ。


「蘭!レベル高いわよっ」


「ちょっと園子〜、もうちょっとトーン落として」


騒ぐ周りと対照的に、快斗の周りはふんわりと陽だまりの、だが凛とした空気を纏っている。

全然違うのに、何故だか新一は、ある姿を思い出していた。



「そんじゃ、本日からお世話になる皆さんに、俺からちょっとしたサプライズを」


少年はそう言ってウィンクすると、すっと片手を上げた。

皆、その綺麗な指先に注目する。

新一は、目を凝らした。





「One...Two...Three!」







パチリ。


指が、鳴る。


ポンッポポンッと、軽い破裂音と共に、上から色とりどりの花が降って来た。

周囲は一瞬静まり返った後、スゲーッと歓声を上げ、盛り上がっている。

新一は、ただただ驚いていた。


(・・・見抜けなかった・・・この俺が?嘘だろ・・・)


高校生では成し得ない、いや、プロのマジシャンにも見劣りしないマジックに、あの白が重なる。


(そんなわけないだろ。マジシャンの全員を疑ってたらキリがねぇ)


頭沸いてるな俺、と軽く頭を振り、新一は自制する事に努めようと思った。


「趣味は甘味屋巡りっ。なんで、甘いもん好きな人、一緒に行きましょう!」


二パッと悪戯っ子のような笑顔で締めくくった快斗に、生徒達から拍手が送られる。


「簡単にでいいと言ったんだがな」


「やっぱ何事も楽しんでやった方がいいと思いません?」


既にクラスに馴染んでいる快斗に、担任は苦笑しながらもほっと胸を撫で下ろしていた。

快斗には、家の事情が複雑だったので大丈夫だろうかと心配していたのだが、この分なら心配無いだろうと安心する。




「黒羽の席は工藤の後ろの席だ。工藤、宜しく頼むな」


「はい、わかりました」


そう、新一が答えた時、快斗の空気が変わった気がするのは気のせいだろうか。


少年は、ゆっくりと、新一の傍へやって来た。










「よぉ」


先程の様子からすれば、快斗はきっと気安い奴だろうと踏んだ新一は気軽に声をかけた。










しかし、それに対する快斗の顔は蒼白で。










「く・・・どう、しんいち」










「ああ?確かにそうだが、何なんだよ」


こいつも探偵というのが珍しいのかと思ったが、それにしては反応が変だ。


「・・・や、なんでもナイ」


「は?何でもないなんて対応じゃねーだろーが」


いきなり不穏な空気になった事に、周囲のクラスメート達は驚きを隠せず、ざわめき始めた。










「・・・っ!探偵なんて、大嫌いなんだよ・・・っ!」










それは、血反吐を吐くような。










哀しさとやるせなさとを綯い交ぜにした、訴えるその声。










とても










とても切実な言葉のように、聞こえて。










探偵、というものを心底憎んでいるのがありありとわかった。

















<To be continued...>











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