「だぁから、俺はキッドじゃねーって言ってんだろ!?」
「・・・まぁ、今日のところはそういう事にしておきましょう。
今日はせっかくの日ですしね」
「そうそう、クリスマスくらい探偵してんじゃねーよ」
お決まりの台詞。お決まりのやり取り。
いつになったら、こんな関係から変われるのだろうか。
それは、快斗がキッドである限り、白馬が探偵である限り、変わる事が無いのであろう。
快斗は、はむはむとケーキを食べながら、ちらりと目の前の男を見遣る。
「・・・?どうしたんだい、黒羽君。まさか、好みのケーキでは無かった?」
「んなことねーよ!マジ、白馬ん家のケーキ最高だよな」
ケーキが載った皿を取られまいとして抱え込み、二パッと笑う快斗のその一連の動作に苦笑し、
「様々な種類の物を作らせましたから、言って下さいね」
「えっ、ほんとに!?じゃあじゃあ、」
白馬のその言葉に、バッと顔を上げると目を輝かせて挙手をする。
「えっと、ストロベリーとチーズケーキとぉ〜」
指折り、ケーキを次々と告げていく快斗を、白馬は幼い子供を見るように微笑んで見詰めていた。
「黒羽君、それで・・・。最高なのは、ケーキだけなのかい?」
コツリ。
ケーキを載せた皿が、快斗の前に置かれたのと同時に、低いベルベットボイスが耳を擽った。
背後から、伸ばされた白馬の腕。
後ろから抱え込まれたかのようなその体勢。
ボッと一瞬にして紅くなった快斗に、白馬はクツクツと笑いを漏らした。
「ハァ!?何、言っちゃってんの、白馬!?あ、そうだ俺ちょっと用事思い出しちまった」
ぽむっという音と共に煙幕が舞い上がり、快斗の姿は消えていた。
「・・・また、逃げられてしまいましたね」
食器を片付けようとすると、その上に載っている物が目に入った。
それは、小さな箱だった。
彼の夜の姿の時に身に着けているネクタイと同じ色の、紅い紅いリボンを解く。
「これは・・・」
そこには、一つの時計と、白い手紙。
彼を思わせるその、白い白いそれに目を奪われ、思わずそれを手に取った。
カサリ。
差出人は書かれていなかったが、それが快斗からの物だとすぐに分かった。
『
お前この前さー、時計失くしちまったって言ってただろ?
だから、やる。
ああ!いや、別に深い意味はなくて!お前と言えば、時計のイメージあっからさ、無いと変っつーかホラ!
・・・まぁ、お前とか工藤とか服部みたいに金持ちじゃねーから、そんないいもんじゃねーけど。
要らなかったら捨ててくれていーから。
んじゃ
』
乱雑で移ろげな言葉。押しが強いようでいて、それを強要しない軽やかさ。
(・・・黒羽君らしい)
クスリ、と苦笑した後、そこに入っていた物を大切に取り出す。
「キミがくれた物を、僕が捨てる筈がないでしょう・・・」
そう呟いて。
白馬は、クラスの女子が見たら卒倒しそうな微笑を浮かべた。
それは、とても。
甘い甘い微笑だった。
END