きっと。
欲しがるばかりじゃ駄目だったんだ。
―ANGEL or BIRD―
月が、綺麗で。花鳥風月の世界のように、清らかなる刻。
そして、それをぶち壊しにする、無粋な警備体制。
俺は、それをKIDが途中寄るだろう中継地点から眺めていた。
キッドなら、きっと一人でなんとかするだろうと。
あのキッドなのだから。
それは信頼でもあり、しかし、誰しもいつも完璧であるとは限らないのだ。
その時の俺はキッドの事を心配しつつも、いつだって大丈夫だったのだからと、彼を万能の存在だと勘違いしていたのかもしれない。
―――なんて、愚かな。
大切な物は、どんな事をしてでもこの手で掴んで置かなければならなかったのに――――――。
殺人が起こるかもしれないと、いつもよりもさらに厳重配備がされ、狙撃班すら用意されたこの舞台。
いつもと違う緊迫感の中、はたして怪盗は現れた。
本物の、怪盗KIDが。
そして、いつものように華麗に宝石を攫い、
なんだ、殺人など起こらないじゃないか。
そうだ、やはりKIDが殺人など犯す筈もない。と、皆が安堵の息を吐いた。
隣のビルへ飛行するKID。その時。
何処に潜んでいたのか、一人の警官が飛び掛った。
何故、そこに居たのかすら分からない。
キッドは内心驚きつつも警官を落としてしまうわけにもいかないので、ビルの屋上に降りようと思ったのだがその警官が邪魔をし、仕方なくすぐ傍の壁の出っ張りに舞い降りる。
「いや、驚きました。まさかこんな所から飛びかかられるなんて。
でも、ご無理はなさらないで下さいね。もう少しで私だけでなく、貴方自身ももろとも落ちてしまう所でしたよ?」
そう、怪盗紳士らしく微笑むキッドに、その警官は嫌な笑みを浮かべた。
「いいんだよ。もしそうなったら本望だ」
ハッとした時には、もう遅い。
キッドは、警官を落とさないよう、それに気をとられ過ぎていた。
―――身体をさらに密着され、手を、拘束される。
「会いたかったよ、KID。こうして偽物の予告状を出せば、きっと君は来てくれるだろうと思っていた」
あの、ネクタイを引いた時に、快斗に付けた盗聴器。
俺だけに聞こえる、真実。
その警官の手には拳銃が握られていた。
しかし、それは怪盗の方ではなく、警官自身を向いていた。
想像しうるに、この角度では警察側、さらには狙撃班から見れば、まるでKIDが自分の意志であの警官に銃を向けているように見えている事だろう。
「やめろ!!」
ここからでは、声は聞こえない。
聞こえたとて、今さら。
「――――ああ。KID。やはり君は美しい。犯罪を犯してもなお、穢れなき白。完璧な美、だ」
パン。
キッドは、大きく目を見開いた。
「これで、君の記憶の中に、私は一生残るだろう?
一番、鮮烈なモノとして」
そう言うと、その警官は、――――否。警官だった、あまりのKIDへの執着のために道を外した者は、こと切れた。
人だったモノが、倒れ掛かった瞬間。
一発の銃声。
白、に、赤い華が散った。
な ぜ。
なんで撃ったんだ?
そりゃあ、キッドは犯罪者だ。
けれど、けれどあいつは人殺しなんてしない。
撃つ必要まであったとは思えない。
『所詮、KIDも犯罪者だった』
浸透していく皆の理解。
きっと、彼らの中でKIDは凶悪犯という認識になった。
今。
君を壊してしまうダケの、正義という名の牙が、君を食い荒らす。
羽根が舞い散る。
薄っぺらにピカピカと光り輝く正義を掲げた、
この手は。
今、何が出来る?
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