―― 背徳者の烙印 ――













「なぁ、新一ぃー。優作さん、元気?」

「あ?何だ、快斗。お前、親父と知り合いなのか?」





不思議そうに、新一は首を傾げた。

それに、何か感じさせるものを滲ませぬように、快斗は即座に言葉を取り繕う。





「あー・・・そっか。ううん、なんでもないんだ」





優作は、俺の事を全く新一に話した事がなかったのか、と。

まぁ当たり前と言えば当たり前だよなと、快斗は冷めた目でその事を反芻し、くすりと小さく笑った。





微かに 違和感。





探偵の鋭い洞察力には、それが分かってしまった。

それでも、快斗はそれを話したくないのだろうというのも分かってしまったから。

聞き出したくなる欲求を押し込め、新一は快斗の髪を優しく梳いた。

この感触 何かに似てると思っていて 父さんだとばかり思っていたけれど

違ったんだ

あの時の あの人の掌に  似てる――――・・・



















――8年前、江古田某住宅地――





「本当に可愛らしく育ったな、快斗君は」





「・・・」





優作を睨む、盗一の視線が何時になく鋭い。 それに、父親が子に対する愛情とは違った色を見つけ、優作は冷や汗を垂らした。





「盗一?もしやと思うが、この前言っていた相談とは・・・」

「ああ。私は快斗を愛している。・・・妻への愛と同じように」





悪友のこの相談には、流石の工藤優作も度肝を抜いた。

事実は小説よりも奇なり、とはよく言ったものだと思う。



「何を・・・!・・・いや、薄々は私も気付いてはいたんだ・・・が」



分かってはいても、面と向かってそれを告げられるのとでは大違いだ。苦々しい表情で、急かすように優作は問いかけた。



「そうか・・・で、どうするつもりなんだ」

「どうするも何もないだろう?快斗は、私の息子なんだぞ」

「それならもう、それでいいじゃないか。何で私に相談する必要がある」

「まだ、続きがあるんだ。・・・優作、私はもうじき快斗の傍に居られなくなると思う。その時、快斗の傍に居てやってくれないか」

「・・・それでいいのか?」



躊躇いがちに声をかける。

それは、優作に快斗を譲る、あげるという事ではなかろうか。

多分この男としても不本意なのだろうが、きっと父を失ったショックで一時的に快斗の精神は壊れるだろう。

それをサポートするならば、それも致し方無い、といったところか。

しかし何故、妻である快斗の母、もしくは快斗の幼馴染などにそれを託さない?

そう考えたところで答えに行き着く。






快斗は、父親を。大きな掌を求めていて。






愛情だけでは足りない。

快斗を包み込めるだけの存在。快斗の足手纏いにならないモノ。

自分が守ってあげなければいけない存在ではなく、絶対の信頼を求めているのだ。






優作が答えに行き着いたのを確認し、盗一は小さく微笑った。









「快斗を、頼んだよ」
















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