言おう、言おうと思っていて。
結局告げられなかった、詞。
―― 背徳者の烙印 ――
「ねぇ、父さん。俺・・・父さんの事が」
「そうだな・・・快斗がもっと、大人になったらな」
切羽詰ったような快斗の声を穏やかに制す、盗一の声は、父親の声色をしていた。
それは、この想いを否定されたに他ならなく感じ。
唇を噛み締め俯く快斗は子供であり、しかし確かにその瞳には情欲の色が宿っていた。
「そんなの・・・いつだよ!」
ずるいよ 父さん
俺はいつだって 真剣で
いつだって父さんの事しか見ていないのに
潤んだ瞳で熱っぽく此方を見遣る快斗を、困った子だなとでもいうように盗一はその頭を撫でながら思った。
きっと、この子は 蝶のように美しく成長する事だろう。
その頃になれば、快斗の自分への愛情も移り変わっているかもしれない。
それならそれでいい。
我が子のまだ見ぬ明日を思い、盗一は目を細めて薄い唇の片端を自嘲気味に吊り上げた。
いつも快斗は明るかったが、その内側には、暗く何処までも深い闇があると感じていたから。
それを照らし出すだけの 光の存在が快斗には必要だ。
それは、わたしでは ない。
「快斗、それは気の迷いってものだ」
「違う!」
駄々を捏ねる快斗に、困ってしまうがそれが嬉しくもあり。
「それなら、こうしよう。快斗が今よりもっと綺麗になって、頭もよくなって・・・勿論、スポーツも頑張るんだぞ?
それから、これが一番大事なんだが、お友達とは仲良く。周りを思わず笑顔に出来るような人になりなさい。」
「うん!」
盗一の立てた人差し指の揺れ動く様を見つめながら、快斗は真剣に聞き入って、力一杯頷く。
その快斗の様子を見て、盗一は一つ溜息をついてから苦笑し、続けた。
「でも、格好つけてばかりではいけないんだ。それでは煙たがられてしまうからね。
時には道化を演じるんだよ。
そんな、素敵な人になれたなら・・・」
そこで言葉を切って、快斗にウィンクをする。
「わかった!俺、頑張る。頑張るから・・・!」
一つ、頷く、盗一。
パァッと顔を輝かせて、快斗は父に抱きついた。
「約束、ね?絶対だよ」
「ああ。約束だ」
ゆーびきーりげーんまーん うーそつーいたーら はーりせーんぼん のーます
ゆびきっ た
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