心には、いつも貴方。


貴方さえ居てくれたら、俺はいつでも笑顔になれるのに―――――











『 Wanna be White 』―2―
















学校をサボる事を決めた快斗は、辺りをプラプラと歩いていた。


遊ぶ気にもなれず、目に止まった木陰で、学校が終わるだろう時間まで過ごす事にした。











「泣いてんのか?」


「うわっ!な、何・・・?」





突然声を掛けられ、勢い良くその顔を上げる。


その顔に涙は一滴も零れていなく、快斗に声を掛けたその少年―――工藤新一は、意外そうに首を捻った。


「泣きたいんじゃねーのか?」





泣きたいのに、一人で居る時にも泣かない。


まぁ、新一にもそういうものは分からないでもなかったが、この目の前に居る少年は、それとは違う気がしたから。











「べっつに。なんでそう思うワケ?」


「あぁ!?そんなのお前を見れば一目瞭然じゃねーか」





快斗は、一度大きく目を見開いてから、数回瞬きを繰り返した。


今まで家族以外のだれも、快斗の、辛い苦しいといった負の感情の心の動きを察した者など居なかったから。


―――其れは、快斗があまりにも巧みに隠した所為でもあるのだが。





この開けっ広げに見えて、その癖、内はそれと分からないくらい何重にも薄いオブラートで包んで―――まるで、淡い硝子越しの世界。


それを、その中に居る快斗を見つけてくれる人が居るだなんて、思ってもいなかった。





「泣けよ。泣かねーってんなら泣かすぞ」


「・・・プッ、あははははは!そ、それ横暴!!」


「てめ、コラ。泣けっつってんだろーが!」


爆笑し始めた快斗に、新一はジュニアながらもサッカーで鍛えた足で一発蹴りでも入れてやろうかと本気で考え始めた頃、密かな嗚咽が聞こえ始めた。





「ひ、っく。・・・ふ。」




その拙すぎる泣き方に、この自分と同じ年頃だと思われる少年は、一体今までどうやって生きて来たのだろうかと考え、胸が苦しくなった。


声を殺すかのような、下手な泣き方に、思わずそっと頭を撫でてやる。




優しく、優しく。泣いていいんだ、と。涙を促すかのように。











己の頭に乗せられた、掌。


その掌は、父の物のように大きくはなかったけれど、同じくらいに、優しく撫でてくれた。


それは、あの掌のように、優しくあたたかくて――――――。






「・・・ぁ、あーーー・・・ぁああ。うわぁああああ・・・・・・!!」

















泣き方の分からなかった快斗は、下手なりに盛大に泣いた。


壊れた、ただ涙を流すために作られた人形であるかのように、ただただ泣いて泣いて。


そんな快斗を、新一は幼く短い腕で抱き締め、その震える背をひたすら撫ぜ続けていた。

















ぽつりぽつりと、快斗がその胸の占めていた出来事を少しだが新一に話し終わった頃、辺りは黄金色に包まれていた。





「キレー・・・」





その横顔を見ながら、新一は、自分の中で何か不可解なものが生まれた気がしてならなかった。


先程まで、自分の胸で泣いていた存在が、こうして景色を見て目を輝かせている。


そもそも、快斗と出会ったのは今日が初めてであって―――――何だか不思議な気がして、でも嫌な気分では無い。




己もその沈んでいく、柔らかくも眩い光を放つ存在を目を細め見遣りながら、声を張り上げた。





「俺がオメーの親父のそのショーの、真実を暴いてやるよ!」




その台詞に、快斗は驚きと期待に満ちた目で新一を見つめる。




「ほんと?ほんとのほんと?」


「おぅ」




「ありがと、名探偵」




まだ頬に一滴、涙が伝っていたけれども、快斗は淡く微笑んだ。


そう言えばまだ自分の名を名乗っていなかったかと思いつつ、新一は顔を赤らめる。






「あははっ、顔まっかだぁ〜!めいたんてーは、実はトマトの星の名探偵だったの?」


既に人からどう見られているかを心得ていた快斗は、心当たりを思いついてにんまりと笑い。


相手の顔を指さしながら、腹を抱えて肩を小刻みに震わせ始めた。





「ばっ、ウッセーッ!テメーこそ人を指差すなとか習わなかったのかよ」


バッと詰め寄る新一と、ケラケラ笑う快斗。




それはすぐに二つの笑顔へと。




無邪気に広がった笑顔は、その後の悲劇など、起こる筈がないと―――――。




後になって思い起こせばこの出来事は、まるで。奇跡のように幸せな一時だった。



























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